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- 作者: 福井晴敏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/04/13
- メディア: 文庫
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やっぱりダイスでした。
内容もまぁいつもの福井晴敏の歳の差コンビもの。純情中年が少年工作員の心を開かせる例のアレです。パターン破りのザブングルを持ってこい。以下各編感想。
・いまできる最善のこと
主人公はいつもの純情中年。相手が少年兵でなく小学生なのがポイント。でもそのクソガキがムカついて感情移入出来ないのが問題。いやガキの人格どうこうじゃなくて助ける行為そのものに意義を見出すのはわかるんだけど…。
・畳算
主人公もヒロインも今までの福井作品にはないタイプの、一番「短編らしい」短編。
ていうかこれ別にダイスじゃなくていいんじゃ。
・サクラ
いつものです。違いと言えば相手役が男じゃなくて女なところと、性格が女ヒイロではないおかげで、いつものやり取りとは違った面白さがあるところ。前2編に比べて終わり方が爽やかなので好き。
・媽媽
女主人公話。正社員の癖に他編の主人公のAP連中よりもよっぽど私生活面が滲み出てます。惜しむらくは歳が…歳が…。30中盤はさすがに俺の中の「女スパイ」像とは結びつかねーわ。
・断ち切る
一番好きな話。主人公が中年通りこしてジジイとか、実は前編の「媽媽」とリンクしてるとかもあるけど、何よりも枡山が孫に唆されて部屋から出かけて、可愛い孫だとか思いつつ予定を切り上げて帰ってきたら実は…という展開が、藤子不二雄の短編「じじぬき」(短編集・ミノタウロスの皿収録)にあまりに酷似していたので。唆し方までまるで同じですよ。何かのテンプレなのか?
あと媽媽とリンクしてるってことで前編の主人公も登場するんですけど、媽媽の「情にほだされた主婦」とは違って、いかにもプロらしい活躍ぶりだったのでそこも満足。30中盤という年齢は「法城まりな…法城まりな…」と呟くことでなんとか乗り越えました。
他の短編(この後の920を除く)よりも後半のどんでん返しが強いのもいい。けど、これは媽媽と連作扱いだから出来た芸当であって、短編としちゃ反則だよなあ。
・920を待ちながら
亡国のイージス番外編ともいえる内容。パターンはやっぱりいつもの福井パターンながら、この短編集の中でも型に一番ハマってるだけあって一番完成度が高い(連作の「媽媽」「断ち切る」と色が違う「畳算」は別として)。番外編と言ってもイージス読んでなくともほとんど問題ないくらいなので、イージス未読の人も楽しめると思う。けどイージス、というか他の福井作品を読んでとりあえず「ダイス」という存在を知っておくのがこの本そのものの前提条件のような気がしないでもない。
会話で気に入ったのは
須賀「なあ、しりとりしようか」
木村「本気ですか?」
須賀「本気本気。じゃ、本気の『き』から」
木村「キリン」
いわずもがな。デュオとヒイロ並みに酷くて笑える。
結局全部ダイスだったなーと思ったら、限定版に「ダイスピンズセット付き」なんてのがあるそうで。開き直るのもほどほどにしろ。
この短編集も悪かぁないですけど、やっぱり基本長編向きの人だと思うんで、次は長編でお願いします。でもローレライ並に長いのは勘弁な。