女子高生=山本五十六 (ワニノベルス)

女子高生=山本五十六 (ワニノベルス)


女子高生=山本五十六2 熱闘 第二次太平洋戦線 (ワニノベルス)

女子高生=山本五十六2 熱闘 第二次太平洋戦線 (ワニノベルス)


とりあえず挿絵に割くページがある癖に戦況図(戦場の地形と戦力分布と侵攻ルートが書かれてるアレ)を一枚も入れない架空戦記小説は全部死ねばいいのに。


一言で言えばギレンの野望のシステムを追加した1日2時間限定のGNOで女子高生がギレン・ザビなお話。四言でした。


正直良い悪いは別にして、タイトルの「女子高生」の部分は固定客層オンリーの架空戦記ラノベ層を呼び込む為の広告以外の何者でもないと思う。1巻は中盤まで現実世界での導入部だからいいとして、2巻はもう女子高の女の字もないですよ。神崎まといの軍事天才少女なんて2巻で既に死に設定ですよ。現実世界でのまといの台詞なんか10個ちょいですよ。表紙と1巻の内容で今まで架空戦記なぞ読んだことがないラノベ層を誘い込み、2巻で地獄へ叩き込むチョウチンアンコウのような恐ろしい何か。


じゃあ内容がハードでリアルで硬派なガチンコ太平洋戦争モノかと言えばそうではなくて、作中の戦いは史実上の第2次世界大戦ではなく、現代で行われる第2次世界大戦を舞台にしたネトゲなわけで、そこから生み出されるものは地の文が現代基準で書くことが出来るメタ特質。例えれば




「筒状の、見ようによっては刀剣の柄に見えなくもない物体から光が伸びてゆく。光は拡散することなく留まり、筒から7mほど伸びたところで先細り、固定された。多少丸みはあるものの、光によって構成されたサーベルのようだ」



という一文を「所謂ビームサーベル」と一言で済ませられるようなものです。実際に架空戦記につき物の捏造機を「量産型ガンダムみたいなもんだ」とか本文中に語られており、この地の文でのメタ描写とネトゲキャラのプレイヤー(通称「中の人」)によるオタク台詞こそが本書の真骨頂というか、作中での台詞を借りるなら「みんな戦争大好き、アニメ大好きな中年なのさ」。問題はアニメを忌避する軍オタはアニメネタに嫌悪感を抱くであろうことと、アニメ専門のオタクは第2次世界大戦の話をフラれてもまるで理解出来ない点ですが、ギリギリ(比率で言うと2・8くらいでアニメ寄り)ラインに乗っかる自分にはどうでもよろしい。




以下面白かったネタ


アメリカ人(というかキリスト教徒)に縁起の悪い13という数字を部隊番号にされたスプールアンスの中の人の台詞 「なぁに、ガンダム好きには縁起のいい数字ですよ」
真珠湾防空部隊の進発コード・アイリーン 「・・・くそアイリーンだ」
・ロシアのアバターは不評。冬戦争でのフィンランドアバターが大人気。
・存命している第2次世界大戦経験者は本人のアバターを取得してプレイ可能(そういえばGNOでも古谷さんがアムロで参加するイベントがあったような)
・大西洋でUボートに沈められる確率は150%。乗っている船が沈められる確率が100%で、救助された後にその船が沈められる確率が50%。
・戦闘機乗りの「中の人」は編隊行動とレシプロ操作に慣れていない
真珠湾攻撃でのアニメ台詞全般




ダメな部分を挙げるとするなら連合国側のトップ陣営シスターズ(国内最大のネトゲサークル)があまりにも馬鹿過ぎて、張り合いのないところ。軍事に疎いんでシスターズの作戦が上策で、主人公がそれを上回る上策(または奇策)で勝ったのか、下策を上策で打ち破ったのかは判別付きづらいところなのですが、シスターズが(策の良し悪し関係なしに)とことん馬鹿として描かれてるのは理解できたので。普通ライバルとして設定されてれば作戦進行中に主人公の作戦にどう反応したりとか、思惑を読みあったりなんなりするところが一切省かれて、決着つく寸前に自殺行為に出て負けを後押しした挙句、副官の「中の人」にぶん殴られて終わりって・・・。これでもこのハルゼー役の西条はいい方で(「うるせえこの軍オタのスタトレ野郎!」とかいい台詞もあるし)、チャーチル役の春田はドイツにフルボッコされてるのに一切出番なしという・・・。確かにアメリカ側の足並みが揃わずトップがバカという設定でも付けなければ日本は勝てそうにないし、真珠湾攻撃ガンダムでいえばコロニー落としか地球降下作戦に相当するわけで、まずここは成功しとかないと後に繋がらないという事情はわかるにしても、1つくらいは主人公の思惑を覆すどんでん返しが欲しかった。2巻第4章のタイトル、予想外と想定外は、何もかも(主人公の)予定通りに進む展開に読者が想定外という意味でしょうか。まあ天才少女という肩書きで登場したくせに、ネトゲ世界での活躍はまるでなく、NPCのように存在する、正直軍事素人の主人公に基礎知識を叩き込むためだけに配置されたか「宇垣纏も女にしちまうか?」というその場の気分で生産された神崎まといと4人がかりで互角な時点で駄目な気がします。


そもそも軍事オタクがネトゲ世界の常識に精通してるとは限らないので国内最大のネトゲサークルのボスと四天王(原文まま)を招聘したという設定が、どうみても2010年(舞台設定は200X年なので)までに実現するには無理がある.hack以上のヴァーチャル・ウォー・ゲームに噛み合ってない気が・・・。どう見てもこのゲーム、ネトゲ経験より軍事オタのほうが有利だよコレ。ていうか国内最大のサークル上位5人っても、得意ジャンルがウォー・ゲームとは限らないんだし、メンバー400人いるならそっち系得意な5人とかに任せればよかったんじゃねえかな・・・。そもそも高校の履修課程にウォー・ゲームを加えて、国防意識の向上と自衛隊員の人気を高めるという設定は、ネトゲで太平洋戦争を、というよりメタ文の為に用意されたファンタジー世界における「何故魔法が使えるのか」と同等の理屈付けと建前でしかないのは明白なわけで、どうせネトゲサークルのトップ連中がこんなもんなら、素直にタイムスリップものか、それこそTRPGで良かったのでは・・・と思ったがそれだとメタは兎も角盛大なアニメ台詞の応酬が無理かな。


最後に1つだけ。Xboxを国立校全校に普及とか、寝言は寝てからにして頂きたい。無理ですよ。