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ミスミソウ 【三角草】 (1) (ぶんか社コミックス)

ミスミソウ 【三角草】 (2) (ぶんか社コミックス)

ミスミソウ 【三角草】 (3) (ぶんか社コミックス)

閉塞した田舎町という狭いコミュニティを、さらに煮詰めた学校の一クラスに転校してきた主人公、野崎春花の存在が、膨らんだ風船に針を刺すかの如く影響したことによって始まる、エスカレートして歯止めを失う陰湿なイジめと、それに対する復讐劇。

春花の周りは家族や祖父等の一部を除いて狂人オンリーではあるが、彼ら彼女らは最初から狂人だったわけではなく、各々ストレスを抱え込みながらもうまくやり過ごしていた毎日が、異分子である春花の存在によって崩壊した結果の凶行なのだ。イジめはイジめたほうが悪いのはわかっているが、この場合誰が悪いのか、何が悪かったのか。一言で片付けるなら運が悪かった。

一巻で春花に対するイジめ自体は終息するので、ジャンルとしては復讐モノに数えていいかも。二言目には「無意味だ」「何も残らない」と無関係な第三者から吐かれる無責任な言葉の数々を、そんなことは言われるまでもなくわかっているが、じゃあどうすれば良かったのかと叩き返す必然的な復讐劇は、それを伝える漫画力と合わさり、何も残らず何も変わらないという結末も含めて素晴らしく好み。

一般的な物差しで計ると上手いとは言いがたい画風も、表情から感情が読み取れる力が補って余りあるし、何より主人公の春花が可愛い。しかしこの可愛さですら、女主人公だから可愛いという漫画的都合以上に、見た目もさることながら閉塞感とは無縁な、穢れを知らない花のような美しさは目の毒だ、とクラスメイトにボウガンを突きつけられる、舞台装置としての理由付けになっているのは皮肉というべきか見事というべきか。

好きなキャラは南先生。

「私は――あの忌まわしい過去を塗り替えるべく、中学時代をやり直したかった。たとえ教師の立場でも、友達を作って、大津馬中学を――卒業したかった」

まあ俺はもう一度高校やり直させてやるよと言われても「別にいいや･･･」ですけど。気持ちはわかる。

あとは小黒さんとか。イジメっ子集団のリーダー格、つまり狂人少女少年団のリーダーの割りに、あれ、案外まとも？と思わせてやっぱりまともじゃなかったり、春花の前に虐めてた佐山さんの都合なんざ歯牙にもかけないあたり、妙なリアリティが。「あの女（春花）が俺たちのバランスを壊した」って、確かにそりゃそうだろうけど、それまで潤滑油というか、スケープゴートの役割を果たしてた佐山さんの存在を綺麗さっぱり無視してるよね君ら。そりゃ佐山さんもキレるよ。一番の被害者は間違いなく春花･･･というか野崎一家だろうけど。

所感とは別に、単行本がなかなか見つからず参った。「ぶんか社コミックス ホラーMシリーズ」って棚のどこらへんにあんだよ！少女漫画コーナーを「まさかな･･･」と思い食い入るように探しちまったじゃねーか。それこそ田舎町の一番大きい本屋程度じゃまず置いてないと思う。通販を使えカスと言われればそれまでだけど、なんかこう、一度探し出したら意地でも店頭で見つけ出したくなるじゃないスか。ならない？あーそー。

余談。閉塞感のある田舎町で起こるイジめと惨劇という共通点からか、サイン会に「ひぐらし」の竜騎士０７さんが来たらしい。そんでもって2009年10月号のホラーM本誌で二人の対談が掲載されてたとか。ちっと読みたかった。