キャラ雑感。櫻井螢。








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ヒロインその3。黒円卓の第五位、レオンハルト・アウグスト。表面上は常にクールを装っているが、能力と同じく割とすぐ熱くなりやすい・・・のみならず、情緒不安定というか、冷静さがウリの具現型にしては窮地に陥るとすぐテンパる悪癖を持ち、さらには病みキャラ属性も持ち合わせ、蓮が自分と同じ境遇、即ち親しい者が死んだ状況に陥ったら即座に「どんな気分?ねえどんな気分?」心底嬉しそうに語りかけたりする。


これで病んだ発言のままに相手を圧倒すれば病みキャラ特有のテンション補正を受けた強キャラ扱いだったのだろうが、実際の戦績は悲惨の一言。先輩に「勝ったことあったっけ?」といわれる通り、単独での勝ち星は皆無。強いて言えば自身のルートで神父を倒したのがそれに当たるものの、ベアトリス(スルーズ・ワルキューレ)の助力あってこそだしなあ・・・。マリィルートの対ザミエル戦も、マリィとベアトリスの力添えを受けてようやく引き分け。とは言えまあ、単独での勝ち星がない、もしくはほとんどないのは螢に限ったことでもないのだが・・・。では何故螢だけこうも負けっぷりというか、弱キャラっぷりが際立つのかといえば、ひとえに精神面が弱いから。強い病みキャラなら兎も角、弱い病みキャラではその精神面の未熟さが際立つのみ。もっと言えば螢以上に病んでる連中が黒円卓にはゴロゴロしてるので・・・。代表例で言うと神父か。


この精神面での虐められっぷりは筋金入りで、マリィルートでは神父にボコられながら「救いたいのではなく救われたいなどと戯けている」と意識せずにいた本心を見抜かれ、本人のルートではヴィルヘルムに仲間と思ったことは一度もねえよ、とこき下ろされ、先輩ルートでは「英雄たる資格なし」と生贄に。バトル以外でも基本的に他キャラに弄られる立場で、先輩に「面倒くさい人だね」と言われたり、司狼にいたっては「ごめんなさい、私死にます、馬鹿だから」の下りがまたもう・・・。敵であるからか、蓮からも言われることがイチイチきつかったする。「悲劇のヒロイン気取りでネガい台詞に酔ってんじゃねえ」とか。ここらへん、丸ごと存在しなかった07版の螢とは中身も扱いも別人であり、香純の言う「見せかけクール」評はその通り過ぎて困るが、むしろそれが良い。クールな女剣士に見えるが実は・・・というこの二面性は、マリィのそれとは逆に好みの範疇。


螢のいいところはアホタルとまで言われるそのダメっぷりだけではなく、折れやすいがそのことをすぐ忘れて立ち直るといわれた、どん底から這い上がるその性質。逆ギレだの頭が悪いだの言われようと、この諦めの悪さこそが螢が螢である由縁。ベアトリスや戒を生き返らせたかったのも、全てはその諦めの悪さからくる願いだし・・・。それになんだかんだでここ一番のザミエル戦では、言い負かすとまではいかないけれど舌戦で充分張り合えてるし、自身のルートでは神父を倒し、ラインハルトとタイマンを張る(張らされた)等、もうどっちが主人公かわからん!個人的には唯一劣等感剥き出しなアホタルのまま相手を圧倒出来た香純ルートラストの蓮とのバトルもポイントが高い。




「ええ、別に藤井君が間違ってないこともわかってるよ。本当に頭が悪いのは私だってことも」
「だけど、だけどさ・・・」
「私、いっぱい殺してきたんだもん」


「死んでよ、ねえ、お願い。死んでよ」
「それができないなら、殺してよ、ねえ殺してみせてよ。あなた強いんでしょ、ヒーローなんでしょ?」
「もう嫌なのよ、冗談じゃないのよ!早く終わって!お願いだから!私はもう、一秒だって聖遺物(こんなもの)に触ってたくないッ!」




ああクソ、可愛いなもう。コンプレックスと劣等感丸出しのキャラに弱いんだよ俺ぁ・・・。四章で妖艶なお姉さまキャラを気取ってた人と同一人物とは思えん。というか三・四章あたりの螢は全部終えてから振り返ると背伸びしてるようで、笑いを通りこして微笑ましい。白本の用語集によると、典型的なアダルトチルドレンとのこと。まあ親代わりがアレじゃあな。


ちなみにルーンは闘争、アルカナは力、占星術だと獅子宮であり、これだけ強そうな字面に彩られながら、本編での弱さはどうしたもんか。まあルーンその他は強さと直接関係あるわけじゃないけど。シュピーネさんが悪魔だしな・・・。ヴィルヘルムの巨蟹宮は狙ったとしか思えんが。積尸気冥界波。


あと私服のセンスがちょっとアレ。いや、嫌いじゃないけど、他のヒロインの私服に比べて浮きっぷりが・・・。どうでもいいが十章の濡れ場では制服、十一章の公園では私服、十二章では軍服と、着替えっぷりが落ち着かなかったりする。特に公園で最終決戦に関しての意思確認の際は私服だったのに、直後に軍服。いつ着替えた。それに黒円卓と決別するために教会にいくのに軍服ってのもどうなんだろ。戦闘に赴く際の正装だからか、さもなくば私服で剣構えてるCGがないからなのか


創造を発動すると赤眼のシャナと化す身体が炎と化し、物理攻撃を透過する能力を備えるようになるものの、格上相手だと透過率が下がるという特性を持つため、有効に活用された場面は少ない。火の中で戦えようないではレオンハルトは名乗れない、という台詞を吐いていたものの、果たしてザミエルの前で同じことが言えたものか・・・。むしろ「身体が炎だから」という理由で、通常なら即死級の攻撃を容赦なく急所や顔面にぶち込まれたりしていて、虐められっぷりを加速しているような・・・。螢ルートの感想でも書いたけど、バトれるヒロインとはいえ、ここまで容赦なく顔面にダメージを受けるのは珍しい。


バトれるヒロインという特性上、他のヒロインより出番が多く、本人以外のルートでも敵のままであれ味方であれ、美味しい場面が用意されている。一つ間違えると某カレーの如く便利屋扱いだが、このゲームにおいては他ルートでも該当ヒロインに負けないほどの存在感を獲得している。ただまあ、全ルートでそれをやるとさすがに優遇しすぎと考えられたのか、先輩ルートでは悲惨な結末に・・・。先輩ルートは黒円卓ルートと言ってもよく、螢も黒円卓のハズなのになあ・・・。やっぱりヴィルヘルムの言うとおり、認められていないということか・・・。それでいてちゃっかりEDでは主人公側に混ざってたりする。香純・螢ルートを下地にしてのグランドルートだからこそ納得できる光景とは言え、さすがに「あれ?何でいるの?」と思わざるをえない。でもそれを言ったら本気で落ち込みそうな気がしてそこがまた(略)。


ヒロインの中では一番、むしろ女キャラの中で一番好きなんですけど、ヴィルヘルムと同じく中の人の好みも大きいか。見せかけクール時の声色と、アホタル時の声色の使い分けが見事。声的には先輩も悪くないんだけど、キャラの特性上、演技の幅が狭いんだよなぁ・・・。そういう意味では香純は結構いい線いってるのにねェ。


また蓮との、ツンデレ同士という組み合わせも見ていて面白い。蓮側のツンが敵に対して当然のものとしても、和解した後も素直じゃないし。それだけに香純ルートや先輩ルートで蓮にキツイ物言いをされる螢は見ていて辛いものがあるのだが、先輩ルートのアレは自業自得か・・・。凄い上機嫌で煽ってたもんなあ。個人的には優等生というか、強い意志を持った人間の弱音が聴きたいっていう劣等感から生まれる歪みは凄く共感できるんだけど。「キャベツ畑やコウノトリを信じている可愛い女の子に 無修正のポルノをつきつける時を想像するような下卑た快感さ」とでも言うか。強い人間の泣きっ面とか見たいんだよ俺は。これは外面強いけど内面弱い螢みたいなキャラへの趣向とは別に、内面外面強い人間に対してね。


ベストバウトはマリィルートのザミエル戦。ライター本人が恋愛が一番まともに書けたというだけあって、本人のルートのほうがキャラとしての魅力は発揮されているのだが、最後の最後でベアトリスに見せ場取られてしまったので・・・。