トリックスターズM (電撃文庫)

トリックスターズM (電撃文庫)



薄い。内容も薄い。いやドラマ性だとかキャラクターの見せ場とか出番とかは前巻のDのほうが薄いんですけど。犯人の動機とか本当に取ってつけたようなもんだったし。そのぶん状況とトリックに力が…と言うよりそれが全ての、「クリムゾンの迷宮」状態だったんで…。今回はそれが逆転して、帯の煽り通り序盤で犯人が確定し、さらに続く「いつ」「どこで」もトリックどころか消去法で確定し、重要なのは動機のみと言う…。唯一トリックじみてた「誰が」の真相も「ああ、アレがああだったのか!」と思わせるようなものではなく、さすがにそれは勘弁して下さい的なオチなんで、まあ、今回は主人公たる周の意識改革の話と言うことかしら。どうせ同じ文化祭の話なんだから、1冊にまとめればよかったんじゃ。


ただトリックまわりはアレだけど未来視に関する考察のシーンは個人的に面白かった。未来視はあくまで確定された未来、必然が重なり合ってできる必然の集合点を映し出すものなので、何年何ヶ月も先の、可能性が錯綜しすぎて確定されない未来は映し出すことが出来ず、さらに本人に未来を変えようという意思がない場合は未来が確定しやすい為に未来視が発動しやすく、逆に変えようと思った場合は本人の意思により未来が錯綜するため未来視が発動しにくくなる。この考えでいくと未来を変える意思を突き詰めた未来視の最終形態は「何も予知しないこと」になるんじゃなかろか。いや、未来を視てからそれを変えようと意思を固めるわけだから、最悪の1つ手前を予測してそれを回避することになるのかしらン。事実作中で周が走り回らなければ、未来視の続きは最悪の形となっていた可能性が高いし。でも走り回る可能性が高かったからこそああいうビジョンになったわけで…。あーあと、確定のしにくさから遠い未来を予知出来ないと言う理論も、直前に読んだ「戦う司書〜」と比較すると全く逆の使われ方をしてるんすなコレ。


そして1巻以降やっとまともに顔を見せた凛々子以外の魔学部4人の陰では、Dで登場したミステリ研究会のメンツが濃い二人を除いてリストラ…なのになんで部長が残ってんのと思ったら、またプレッシャーかけられてテンパる役割なのね。衣笠サンはDに続いて2流探偵っぷりが板についてきていい感じ。二階堂みたいで。みゃー子さんは…語尾が「ッス」のバカ明るいキャラは嫌いじゃないけど、コイツ一人で色々壊してる気がするぜ。



次でシリーズラストくさいのでD並みの面白さを期待。とりあえず表紙は素晴らしい。主役誰だよ。