バーバ・ヤガー 1 (MFコミックス アライブシリーズ)

バーバ・ヤガー 1 (MFコミックス アライブシリーズ)


ヨイコノミライでオタクとげんしけんに憧れて漫研に入りたくなったオタク予備軍をゴルディオンハンマーでハンマーヘルした先生ですが、今回のコレはなんと言えばいいのか。小説に例えると、長編ミステリで章ごとに一人称の語り手が変わるカンジ。


基本的に1話費やしたAというキャラのイメージが、次の話では別人物Bから客観的に語られ覆され、また視点が変わることによって、1話前まで心情が吐露されなかったBの印象もAの主観によって構成されていた1話前のイメージから変貌すると言った風に話は進んでいきます。要は作中でも触れられているように「誰も信じちゃ駄目だよ」、もしくは後書き通り「自分しか知らない自分と自分は知らない他人」のお話ですね。手法自体はAVGで言うところの「ザッピング」そのものなんですが、視点が切り替わることによって生じるメリットが、真実へと至るピースよりも個々人の悪意の発露のほうが大きく感じられるあたりが「らしい」。ミステリというよりホラーかなあ。


ミステリ的にはこういう場合、物語の一応の主人公としての立ち位置にいながらも、まだ決定的に秘密が暴かれていない溝呂木さんが怪しいんですが(一人称視点の主人公に殺害現場を目撃させ「そんな・・・」と呟かせておいて実は犯人っつーアレ)、多分この話は誰が犯人とかそういうんでなくて「皆が少しだけ自分に嘘をついてごまかした。そのせいで消えてしまった女の子」という作中の台詞どおり、一人一人の行動が不幸にも噛み合ってしまったってオチなんじゃないかなー。それでも溝呂木さんが今後ナニを考えて行動しているのかが明かされるのは楽しみ。きづき先生がこんなギャルゲーにそのまま出てきそうな裏表のないキャラクター(表の部分しか描かれてないので当たり前といえば当たり前)をそのままにしておくハズがないじゃないですか。