フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)


フリーランチの時代
表題作。ハインライン幼年期の終わりは読んだことないんですけど、ファーストコンタクトがどうたらからして、これが小川一水版の「幼年期の終わり」なんですかね?


これを異星人とのコンタクトか侵略物と取るかで話は変わってくるんだけど。しかし最初の4人は火星という舞台で「生きるか死ぬか」の問いに「生きる」と答えなければ即死亡(捕食)される状況だけに、自由意志ではあっても半ば強制的に変質させられたものとしても、メットを外せば即死亡にはならない地球人達までこうも簡単にエイリアンを受け入れるか?と思ったけど、最後に海にエイリアンをばら撒いたってことは、やっぱり他の地球人もいきなり地面に捕食されて「生きるか死ぬか選べコラ」と強制されたのかしら。なんかEDENでコロイドに入るか入らないか、みたいな話だけど、例えそれが進化だとしても受け入れるんならオーケー、無理なら死んどけって選択肢を出すエイリアンは、作中で言われてたように「悪いエイリアンに思えて仕方ない」なあ。例えれば「こうすりゃもっと良くなるよ」と他人に自分のパソコンを勝手に弄くりまわされた感じ。余計なお世話だ。


Live me Me
生き返ったと思ったら死んで死んだと思ったら生きていたけどやっぱり死んでいた、みたいな話。シンセット(高殻の義体みたいなもん。違うのは脳そのものは植物状態の本来の肉体にあるとこ)として蘇ったのに、見舞いにきた母親は自分をスピーカーとしてしか認識せず、あくまで植物状態の方の自分に話しかけるシーンが印象的。


Slowlife in Starship
未来世界の引き篭もりが半ニートのフリーター生活を経て就職活動に臨む話。一番好き。


千歳の坂も
フリーランチに、Live me Meも含めるとすれば3つ目の不老不死を取り扱った話。前者2つと違って、異星人による進化でも義体化でもなく、医学の進歩により平均余命が毎年1年ずつ延びることになり、老人だらけになった世界で、延命処置を避け続ける女とそれを追う男の話。老人だらけになって年金制度が立ち行かなくなり、定年退職制度を廃止して、延命を受けない人間からは金を取るって、なんか藤子不二夫の短編思い出すなこれ。高齢化が問題になって60歳を迎えたら家族に火あぶりにされるっていうひでぇ話だったような・・・。2番目に好き。


アルワラの潮の音
時砂の王の外伝。基本的にハッピーエンドで締める小川先生にしては珍しく後味の悪い話。時砂〜と違ってOも事務的だしね。フェイトゼロと同じように「後にハッピーエンドが見えているからこそ書ける話」か。



うーん。やっぱりこの人も長編かな。短編のほうが面白い小説があれば見てみたいけど。漫画の場合は「読みきりは良かったが連載されてみると・・・」ってのがいくらでもあるのにねェ。