悪鬼編


邪悪宣言 装甲悪鬼村正 オリジナルサウンドトラック

邪悪宣言 装甲悪鬼村正 オリジナルサウンドトラック




かつてここまでエロゲーのエの字もないサントラジャケ絵があっただろうか。切腹前にしか見えねえ。以下ネタバレ。









悪鬼編あらすじ。魔剣装甲悪鬼で死んだはずの景明は光によって生かされ、母親に続いて娘をも自らの手にかけてしまった罪の意識と、使命を果たした後の燃え尽き症候群に苛まれ、昼間から酒をかっくらい、セミナーに乱入しては「神のくせに何故俺ごときに殺されたのだ!」と大暴れ、喧嘩を仲裁しようとすれば「悪いのは私なのです!俺を罰しろ!殺せ!」と叫んで道端に倒れこむのでした。迷惑だなこの人!


その後も住人同士の諍いを治めようと貢献して少し救われた気分になったかと思えば、何者かに殺人鬼だと言いふらされた所為で白い眼で見られることに耐え切れず叫んで逃走→酒→村正とセックスという駄目コンボを決めるものの、アナタは元々その程度の人間なんだからそれでいいのよ、と肯定され、吹っ切れるのでした。景明の不幸さは自身の性根も大きいですが、周りにこうやって逃げを肯定してくれる人間がいなかったのも原因だよなあ。駄目人間でいいじゃない。親王&署長は何も言わず許すだけだし、一条は弾劾担当、香奈枝さんは心情を汲みつつも本能優先な人だし・・・。


吹っ切れて村正とのリア充生活をおくる景明。村正の料理教室には吹く。バザーを回ってイチャつきながら互いの幼い頃の夢を語り合ったり、メイドコスを着せて顔面にぶっ掛けた後本番暗転したり(いい加減にしろ)、光坊のこと完全に忘れてんなこの人。これでようやく平均的なエロゲー主人公並の待遇なわけですが、このゲームは装甲悪鬼村正。ささやかと言えど幸せなど許されない。童心坊の能舞台と同じで嫌な予感しかしないというか、もはや前振りだろこれ。


結果予想通り、いや予定調和の如く、二人で旅に出ようと列車に乗り込もうとしたところで雪車町にぶっ刺される村正。ギャー。正直リア充生活の脇で忘れ去られた光坊のほうに何かあると思ってただけに(北鎌倉で武力衝突とかその伏線かと)、一枚絵挿入タイミングの絶妙さも相まって勘弁して下さい状態。この一連のシーン、列車に乗り込むまでの挿入歌「落葉」と、刺されるシーンを挟んでの「TheCall」の使い方が絶妙で、特にTheCallをバックに他人に理不尽にあしらわれる景明が「理不尽だ!」と慟哭するのにあわせて、今まで理不尽に殺されてきた被害者が一人ずつ浮かぶ演出。素晴らしい。そう、確かに景明は自分に対する裁きを望んではいるものの、望む者に望む物を与えたのでは罰足りえず、そういう意味ではこれぞ効果的な仕置きなわけですが、感情を廃して客観的にそう断じるには、自分は湊斗景明というキャラクターに長く付き合いすぎた。奈良原・・・もう少しこう・・・手心というか。「人殺しに幸せになる権利などありませぬ」。さよか。


と、真面目に語ってみたところでナンですが、このTheCallが流れる一連の場面、全部終わったあとにここだけ切り取ってプレイしてみると、恋愛ドラマの1シーンぽくてちょっと笑える。いや見たことねえですけど恋愛ドラマ。外国へ旅立つ恋人に思いを伝えようと漸く決心した主人公が空港まで行かんとするも、ありとあらゆる交通機関に駄目だしされる、というのが俺の中での恋愛ドラマ最終回のイメージなので。普通なら友達やらライバルやらが「何してやがる、乗れ!」と助けにくる展開も含まれますが、この村正の場合、ヒロイン兼ライバルの連中が助けるどころかむしろ攫う側に加担しているのでアウト。容赦ねえ。


最後は雪車町との決戦。流れ的に「あのツルギならもう殺したよ」発言はウソとはわかっちゃいたものの、最初は衝動的に殺してしまいまして、その後スタッフロールが流れることに驚愕、ロード、やり直し。殺さずに村正と共に武帝となるENDになって一安心。ある意味魔王編のエピローグがこっちの武帝ENDを正史として認めているようなもんなんで有難い。そして悪鬼の道を行くのを認めない一条とのラストバトルで締めと。ただ一条、このルートだとまだ英雄編での「悪を制す正義もまた悪である」という結論に行き着いてないんだよなあ。悪鬼上等の考えを極めてしまった景明が英雄編みたく諭してくれるかも怪しいし、この結末に持っていくならもうちょっと魔王編で一条に焦点を当てるべきだったのでは・・・。




やーしかし10周年に相応しく、質、量共に充実した内容だと村正もこれにて終了。長い分アラがないこともないですが、そのぶんそれを補って余りある、大作特有の世界観の広がり、平たくいえば妄想の余地がありまくりなので、しばらくはこの余韻に浸っていたい。人気投票とかもあるしな(何故かトーナメント式の)。




次はキャラ雑感あたりを書きます。